【column】水やりをしてくれる人

「その子さんの好きなところは、いくらでも挙げられる」。

1ヶ月に一度、食事に行くだけの関係だったころ、彼(パートナー)からよく手紙をもらっていました。

あるとき、そんな文章を読んで「ふふ。この人かわいいな」と笑顔になったのは今も覚えているし、彼は現在進行形で私のことが好きで好きでたまらないと分かります。

それぞれ福岡と大阪にいるときはFacebookビデオ通話をします。つながると「その子さん♪」と満面の笑みを浮かべる彼。寝る前に私と話すとリラックスして眠れるそう。

私は睡眠導入剤をはるかに超えた高貴な存在のようですが、実際のところは問題の多い女です。

空腹状態だとあからさまに不機嫌になるし、苛立って意地悪な気持ちになって「もう福岡帰る!」と告げて彼を泣かせたこともあるし(付き合う男性を言葉で泣かせがち)、動きが雑なせいでモノを壊してしまうこともあるし、ズボンで締め付けられるのが嫌でトップス+ショーツというひとりの家でならまだしも的格好で寝るし、「◯時に電話する〜」と宣言しつつも忘れるし、「ひとりになりたい」と旅先で別行動をしだすし——と書いているときりがないし、自分では気づいていない困った部分もまだまだあるのでしょうが、こんな不完全な私を彼は溺愛してくれています。あと、足もスニーカーもくさいし。この世に完璧な人間なんていない、とはいえ、けっこう変な女かもしれないのに。

一方で、私も彼と共に生きるなかで、彼の好きなところをいくつも挙げられるようになりました。好きなところはどんどん増えています。

「今日のその子さんが一番きれい、かわいい」と本気で言ってくれる、穏やかな性格や笑顔、愛情を言葉と態度両方で伝えてくれる、私という人間を信頼してくれる、ふたりの時間を楽しくする名人、一緒にいてラクだし疲れない、私が思いつかないアイデアやヒントをくれる、センスがいい、吹き出してしまうくらい腕力が強い、身体が厚い、目がかわいい、鼻がきれい、堅実さがある、自由人、新しい環境に果敢に飛び込む勇敢さがある——惚気に聞こえるかもしれないし、惚気なのかもしれませんが、いろいろと好きなところがあります。一つひとつエピソードを添えて説明できるくらいに。

この他「私のすべてを応援してくれる」ことも好き。東京から福岡に単身で引っ越したことも、新たな土地を旅しにいくことも、新しい仕事を始めることも、一の腕サロンを開業することも。私の行動すべてを「いいね!」と応援してくれるから。何をしようとも否定されたことは一度もないんです。

昔、仕事に励む様を応援されなかったことはあるし、収入を知られて冷められたこともありました(その頃は収入を右肩上がりにすることに夢中で、ろくに休みもとらず仕事しかしていなくて分不相応に稼いでいたから)。「パートナーは鏡」ですから、自分も相手方の仕事を応援するモードではなかったのだと思います。ただ、応援されないこと、否定されることは気持ちが沈むし、いい思いはしません。

逆に、応援されることは、安心感に包まれる感覚があり「ここに帰ってきたい」と思わせられます。私が植物なら、彼はそれがすこやかに成長していくよう、様子を見ながら適宜水やりをしてくれる人だから。

これほどまでに満ち足りた気持ちにさせてくれる人と出会うことはないので、私が他の人に目移りすることも、「愛の文脈」で新たに人を好きになることもないでしょう。未来のことは誰にもわかりませんが、今は。

今日もなんでもないことで爆笑しました。よくある大阪の1日。この状態を当たり前だと思わず、1日1日を大切に過ごしていきたいです。